雨が降らなければ先週行く予定だった北山越・土佐街道の笹ヶ峰(愛媛県四国中央市・高知県大豊町)を歩いてみた。土佐藩の参勤交代の道ということでかなりなめていたのだが・・・・・・。
<コガクウツギ>
■行先・位置
笹ヶ峰(峠) 1027m
高知県大豊町・愛媛県四国中央市、北緯33度53分00秒・東経133度38分37秒
■コースタイム
総野橋 8:20(7分)→ 下り付 8:27(3分)→ 登山口 8:30(39分)→ 腹包丁 9:09(31分)→ 樫のやすば 9:40(13分)→ 徒武 9:53(18分)→ 笠取峠 10:11(24分)→ 水無峠 10:35/10:41(15分)→ 七曲り 10:56(25分)→ 杖立地蔵 11:21(15分)→ 笹ヶ峰 11:36(昼食)/12:40(6分)→ 杖立地蔵 12:46(17分)→ 七曲り 13:03(11分)→ 水無峠 13:14(23分)→ 笠取峠 13:37(14分)→ 徒武 13:51(7分)→ 樫のやすば 13:58(18分)→ 腹包丁 14:16(24分)→ 登山口 14:40(3分)→ 下り付 14:43(13分)→ 総野橋 14:56
【↑3時間16分 ↓2時間16分 計5時間32分】
■コース水平距離 11.0㎞ ■天気 晴れ
■楽しさ ★★★★★(満点!)
登山口は、四国中央市(旧新宮村)の「下り付」集落だ。高知自動車道南国ICから新宮ICまで約 30分のドライブ。
予報では高知県は曇りで午後から雨の所もあるそうだ。瀬戸内海側には晴れマークも出ているけど予土国境の笹ヶ峰は微妙な位置だ。山に入る前に馬立 PAでトイレ休憩。
<馬立PAから新宮方面> <馬立PAから大豊方面>
笹ヶ峰トンネルを抜けると目に飛び込んできたのはほとんど雲のない青空!「国境」を越えると天気が全然違う。振り向いて高知県側を見ると、どんより・・・。山頂付近を雲に覆われているのは笹ヶ峰南西に位置する橡尾山周辺か。笹ヶ峰は左手前の尾根に遮られて見えない(笹ヶ峰のピークは笹ヶ峰トンネル真上より少し東)。
高知道を新宮ICで下りて、県道5号川之江大豊線を大豊町方面へ向かう。道の駅「霧の森」を通過してICから 2㎞の総野橋袂に車を置いた。
県道から歩いて約 200mで「下り付(おりつき)」の集落に入る。
谷沿いの道にユキノシタが群生していた。名の由来のとおり「風花」のようだ。ユキノシタ(雪の下)は本州・四国・九州に自生する常緑の多年草で湿り気の多い場所を好む。葉は生薬として、また、山菜として利用される。なじみの花だが、よく見ればけっこうきれいだ。花期は 5~6月。
宿のあった場所にある「高札」のような説明板には「笹ヶ峰を越え腹包丁の急坂をやっと下りついて安堵した」とある。数件の茶店もあったという。集落のはずれの登山口に土佐藩の15代藩主、山内容堂の詩碑が建つ。
詩碑には、
「雨来たりて筧水水聲を生ず山路何ぞ違はん匍匐の名に丿乀窮めんと欲すれば猶丿乀徐々に履に飽く白雲の行匍匐の山中過雨此の詩有り時に癸丑五月十五日也 直養」
とある。
参勤交代の帰途、「腹包丁」の休場で詠んだという。「直養」は山内容堂公の別号。
コナスビ(小茄子)はサクラソウ科オカトラノオ属の多年草で、日本各地の林下の道ばたなどの少し湿った場所に生える。花期は5~6月とされるがもっと遅くまで咲いているのを見かける。花弁は 5枚のはずだが 8枚のものは初めて見た。
イヌトウバナ(犬塔花)はシソ科トウバナ属の多年草で、北海道・本州・四国・九州に分布し山地の木陰を好む。似たものにヤマトウバナがある。花期は 6~9月。
カラスウリ(烏瓜)はウリ科カラスウリ属のつる性多年草。カラスウリの花は夏の夜に開花して日の出前にしおれてしまう。カラスウリにはいくつか種類があって、これはキカラスウリ(黄烏瓜)というタイプのようで普通のカラスウリより開花に時間が掛かるので昼でも咲いていることがある。根は生薬に利用されるので人家の近くに多い。ちなみにカラスウリの花言葉は「よき便り・誠実」、そして「男嫌い」・・・・・・。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」では、
ジョバンニが牛乳屋へ行くついでに烏瓜のあかりを川へ流すのを見に出かける。
「今夜はみんなで烏瓜のあかりを川へながしに行くんだって。きっと犬もついて行くよ。」
「さうだ。今晩は銀河のお祭だねえ。」
「うん。ぼく牛乳をとりながら見てくるよ。」
谷から離れると人工林の急登の蒸し暑さに汗が噴き出す。こんな道を参勤交代の行列が「通ったが?」、この道で籠は「担げんろう!」、殿様にも歩いてもらわんと「無理で!」ということで笹ヶ峰越えの一番の難所「腹包丁」を登る。ここは武士が山を下るとき刀のこじりがつかえるので刀を腹の方に回して下りたという。土佐がその昔「遠流」の国だったのことが実感できる山道だ!
九十九折れの道を汗を拭きながらひたすら登る。
急登を登りつめ尾根に出ると「樫の休場(やすんば)」に着く。勾配もゆるくなって一服したくなる場所だ。登山口から樫の休場までの直線距離で約 1000m、標高差約 500m!
アオテンナンショウ(青天南星)はサトイモ科テンナンショウ属の多年草で、瀬戸内海・岡山県・四国に分布する。仏炎苞の先が長く垂れるのが特徴。花期は 5~6月。
イチヤクソウ(一薬草)はイチヤクソウ科イチヤクソウ属の常緑多年草で、北海道・本州・四国・九州に分布する。やや明るい林内に生え、優れた薬草として利用されたためこの名がついた。花期は 6~7月。赤い花の「ベニバナイチヤクソウ」を富士山で見たことがある。
三角点 860.7mの小ピークの右をかすめて「徒武」を通過、少し下ると中間点の「笠取峠」に着く。笠取峠からは東へ下れば新瀬川の脇本陣へ、西へ下れば木地屋へ下るとある。
石畳の道が往来の人々の会話が聞こえてくるようで歴史を感じさせてくれる。
なだらかな丘のような「水無峠」までゆっくり歩いて 2時間15分。3本の天然杉が立つ峠の茶店で旅人も足を休めたという。道の東の小ピークは標高点「・904」。
水無峠は人工林の森だが自然林のような雰囲気がある。
人工林に覆われた空を奪い合うように枝を広げる広葉樹。
周囲が自然林に変わり、「七曲り」の九十九折れを登りつめるとベンチが置かれていて、小ピークを過ぎると木々の間から三傍示山が見えてくる。
更に進むとやせた尾根の鞍部からコース中で唯一の展望が得られ、「塩塚峰」1043.4mや「剣ノ山」1105.6mの稜線を望むことができる。
鞍部から少し登り返すと「杖立地蔵」が旅人を迎えてくれる。往還が笹原の緩やかな道になると「国境」は近い。
予土国境には大きな 2本の柱と 9代藩主、山内豊雍の歌碑がある。幕末に坂本龍馬や板垣退助らもこの峠道を越えたとされる。北西の小ピークが目指す笹ヶ峰山頂だ。
笹ヶ峰の山頂には 1016mの道標があり、山行記録にも標高 1016mと記されていることが多いが山頂に三角点は無く、四等三角点「笹ヶ峰」1015.99mが設置されているのは山頂から南西に約 200mの尾根突端だ。国土地理院の 2万5千分1地形図:野鹿池山(高知)では往還がピークを小さく巻いて東側の 1020mラインを通っている(2つ上の柱のある写真参照)のでそれより高いのは確かで、地形図には標高点もないが 1027mが正解のようだ。笹ヶ峰に限らず三角点が山頂にあるとは限らない。
高知自動車道「笹ヶ峰トンネル」は山頂から西に約 500m、四等三角点「笹ヶ峰」と標高点「・1029」を結ぶ尾根の最低鞍部の下を抜けている。県道の笹ヶ峰隋道は更に西で標高点「・1029」と「橡尾山」1222.1mとの最低鞍部の下を抜けている。
コガクウツギ(小額空木)はユキノシタ科アジサイ属の落葉低木で、本州の東海地方以西・四国・九州に分布する。樹高は 1m程度で葉に艶がある。大きな萼片の装飾花と花片が 5枚の小さな普通花があり、装飾花の萼片は 3~4個で中央部には結実しない両性花を備える。花期 5~7月。
オオミヤマガマズミ(大深山ガマズミ)はスイカズラ科ガマズミ属の落葉低木で、北海道・本州・四国・九州の主に太平洋側のブナ林に自生する。ミヤマガマズミより葉の幅が広い。花期は 5~6月。
山頂はブナに囲まれた落ち着いた佇まいで、木陰になっているのでゆっくりくつろげる。休憩にも食事にも最適の場所で昼寝も OK。
今日の一杯は5月30日発売の「日清 有名店が推す一杯 なんつッ亭 黒マー油豚骨」、「なんつッ亭」は1997年のオープンの有名店でシンガポールにも店舗があるらしい。味はインスタントでは出し切れないだろうなあ。デザートに酸味の利いたチーズケーキが美味しい。
帰り道で見つけたホコリタケ(別名キツネノチャブクロ)は、ホコリタケ科のキノコで湯通しして皮をむき、醤油やバターで串焼きにするとおいしいらしい。はんぺんのような口当たりは汁物にも合うというが食べたことはない。古くなるとてっぺんに穴が開いて、触ったりすると煙のように胞子を出すほんとの「ホコリ」タケになる。そうなると食べられない。幼菌はトゲトゲが目立つ。
14時43分、どこか懐かしい雰囲気の下り付集落に帰ってきた。
水量が増した谷の岸でグミが実を付けていたので味見してみた。少し渋いけど甘い。
民家の畑に咲く花たち。
車を置いた総野橋の袂まで歩いた時間は往復で 5時間26分。
道の駅「霧の森」の駐車場は満車で道路に車があふれていた。有名な「霧の森大福」はすでに売り切れ。川では子供達の歓声が上がる、梅雨明けも近い。
■「霧の森」 愛媛県四国中央市新宮町馬立 TEL 0896-72-3111
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