石立山 登るたびに新しい花と出会える山、イシダテクサタチバナも満開  
剣山地 (いしだてやま 1707.7m)2010年7月4日日帰り  
    
行  程 ■1日目
1日目 石立山登山口〜竜頭谷〜岩場〜西峰〜石立山〜西峰〜岩場〜竜頭谷〜石立山登山口 【石立山登山口】07:37→【竜頭谷】08:11→【岩場】09:04→【西峰】10:32→【石立山】10:45(昼食)/11:22→【岩場】14:03→【竜頭谷】14:49/14:55→【石立山登山口】15:21
昨日(7/3)はよく降ったし、夜明け前はまだ雨音がしていたので、ちょっと心配だったが降水確率は低い。イシダテクサタチバナもピークだろう。もうそろそろコメツツジの三嶺へも登らねばならないが、この日は石立で良かった!
コースタイム
登り 3時間5分
下り 3時間59分
7時間04分
コース距離(水平)
8.1q (石立山登山口〜石立山〜石立山登山口)
別府渓谷に着くと、Oさんの車があった。Wさんが登っているはずなのだが・・・?
登山口から200mほど登った地点で追いついたが、Oさん1人だった。
今日の竜頭谷渡渉点(標高860m)は靴を脱がなくてもなんとか通過できた。
累積標高差(往路)
+1204.9 -71.5
メンバー
Aさん、自分
(Oさんと合流)
       
天気
曇り
竜頭谷を離れ、ざれた斜面を南向きに少し登って尾根に取り付くと、東北東に向きを変え、西峰に向かいほぼ真っ直ぐに登る。Oさんに失礼して元気なAさんと山頂を目指す。登山道沿いにヤマボウシ(山法師)が咲いていた。花は中心の黄色い部分で、花弁に見えるのは総苞片(つぼみをを包んでいた葉)。食べたことはないが、果実は甘くて美味しいらしい。
竜頭谷から更に300mほど登ると、標高点1181の小ピークに着く。木の根が張って柔らかい鞍部を進む。鹿の食害防止ネットを過ぎると直ぐに「岩場」だ。
「岩場」からの展望、左が別府方面(南西)、中は登ってきた尾根の方向(西)、右は白髪山、三嶺方面(北西)。今日は雲に覆われて見えない。
サルオガセ(猿尾枷) ガマズミ(莢迷) ヤマキサゴ
梅雨に入ってからキノコがどんどん生えてきた。名前は不明。右はウスタケ(臼茸)
?? クヌギタケ? ??
ツルアジサイ(蔓紫陽花) フタリスジカ(二人静)
石立山の固有種、イシダテクサタチバナ(石立草橘)が満開のお花畑!今日はイシダテクサタチバナの特集だ!
イシダテクサタチバナ(被子植物・双子葉類・合弁花類・ガガイモ科)は、環境省のレッドデータブックの絶滅危惧II類(VU)に分類されている。それによると、平均減少率は約30%、100年後の絶滅確率は約 90%、園芸用の採集、登山客による踏みつけ、植生の遷移が減少の主要因とある。
イシダテクサタチバナには雨が似合う。日があたると萎れてしまいそうだ。
本家のクサタチバナは本州(関東・中部・近畿)、四国に分布し、滋賀県伊吹山には大群落がある。イシダテクサタチバナは、クサタチバナに似ているが、花序が茎頂にのみつくことや花弁(花びら)が細く先が尖っているなどの相違がある。共通点は、石灰岩地を好むということだ。
矢筈山(阿波)と剣山にも少し分布しているらしい。
イシダテクサタチバナの鑑賞に堪能したら西峰に向かい最後の一登り。アポロチョコのようなかわいらしいキノコが生えている。どうやらクヌギタケのようだ。食べられるが美味しくはないらしい。
イシダテクサタチバナのお花畑から西峰までは10分少々。山頂へは右へ進む。左に少し行けば捨身ヶ嶽の岩場に出る。
クヌギの古木に這い登ったツルアジサイが白い花を咲かせていた。
 
10時45分、道標が林立する石立山山頂に到着。6週間連続で山頂を踏んだ。今日もガスって20〜30mから先から向こうは見えない。
この日は、西峰から山頂周辺にヤブウツギ咲いていた。ウツギの開花時期が白の5月、黄の6月、赤の7月と少しずつずれているのが面白い。
再びOさんと合流してランチタイム。コンビニおむすびとラーメンはいつもどおり。忘れてはならないビール(発泡酒)は保冷剤でしっかり冷やして持って来た。
何というコケだろう?水分を多く含んで生き生きとしている。コケの近くにヒメレンゲ(姫蓮華・上)とヒメキリンソウ(姫黄輪草・下)が仲良く咲いていた。花だけ見るとよく似ているが、ヒメキリンソウが一回り大きく、葉の形状やつき方が違うので識別できる。ヒメキリンソウは、四国の愛媛、徳島、高知のみに分布する。環境省レッドデータブック絶滅危惧II類(VU)。
イワキンバイ(岩金梅)は傾斜のきつい岩場にへばりつくように咲いている。
イワツクバネウツギ(岩衝羽根空木)は、本州中部以西・四国・九州の石灰岩地や蛇紋岩地域の急傾斜地などにに遺存的に分布する落葉低木。茎の樹皮には6筋の溝がある。白とピンク色が混じった小さな花がかわいらしい。環境省レッドデータブック絶滅危惧II類(VU)。
ギンロバイ(銀露梅)も見頃をむかえていたが、危険な場所だ。落ちたら助からないので近づかない方が無難。
マツムシソウ(松虫草)は、1〜2週間後に開花か。由来は、花の終わったあとの
坊主頭のような姿が、 仏具のふせがね(伏鉦、俗称「松虫鉦」)に似ているからということだ。松虫が鳴く頃咲くというのはどうやら間違いらしい。
ウメバチソウの開花はもう少し先の夏が終わる頃。
カノコソウ(鹿子草)の花は清楚な淡いピンク。白いのはツルカノコソウ(蔓鹿子草)。
シコクシモツケソウ(四国下野草)は四国と九州(宮崎県白岩山)の石灰岩の山地に自生する。7月ごろに茎の先に花序がを出て白い小さな花をつける。最大の特徴は“純白のシモツケソウ”ということで、シモツケソウ(写真右上、北アルプス唐松岳で撮影)と比べると色の違いが一目瞭然。オニシモツケソウ(写真右下、北アルプス白馬岳で撮影)も白花だが、自生地が本州中部以北の亜高山帯という点と、一回り大型で花序が密生している点が異なる。環境省レッドデータブック絶滅危惧IB類(EN)。
この花の仲間は、ヨーロッパアルプスで有名なエーデルワイスやミネウスユキソウ(写真右→、鹿島槍ヶ岳で撮影)のように高山に生えるものがほとんどだが、ウスユキソウ(薄雪草)は、本州・四国・九州の山地帯に生える。四国と紀伊半島にはウスユキソウの変種のひとつ、コウスユキソウが分布する。うっすらと雪が積もったような綿毛がある。
本州中部以北の亜高山や高山帯に分布するムシトリスミレは、石立山の高度約1,000mに隔離分布していることが知られている。また、三重県松阪市飯高町と岐阜県根尾村にも飛び石のように分布していて、これらは氷河期の遺存種と言われている。分布している場所の共通点は生育地付近に石灰岩が見られること、滝や渓谷が近くにあることなど。  
ムシトリスミレ(虫取菫)は、スミレに似ているがスミレの仲間ではない。粘りのある球(写真で白く見えているツブツブ)がたくさんあるロゼット葉は、くっついた虫を消化吸収する胃袋の役目をしている。噛みつきはしないが食虫植物だ。ちなみに、「蓮のムシトリスミレ群落」(松阪市飯高町)は、紀伊半島で唯一の自生地であり、三重県の天然記念物・希少野生動植物種として指定されている。
右端のイワユキノシタ(岩雪の下)は、東海地方、紀伊半島、四国の深山の岩の上にまれに生える。左と中央は??
  ヤマブキショウマ(山吹升麻)は、本州、四国、九州の山地に分布するバラ科の植物。
ヤマシャクヤク(山芍薬)は、5〜6月に咲く。以前は赤い花があったらしい。
スナゴケ(砂苔・上はそのアップ)のボールのような塊は、柔らかくてスポンジのようだ。
左の背の高い植物はコウシュウヒゴタイ(甲州平江帯、キク科・トウヒレン属)のようだ。深山の岩場に生育する多年草で分布は限られており、関東地方の西部から長野・山梨県にかけてと、遠く離れた四国で確認されている。妙義山(群馬県)や雲取山(東京都・埼玉県・山梨県)に生育している、四国では四国カルストと石立山か・・・。花が咲いたら確認したい。
あちらこちらと寄り道しながら下山する。このモミの大木にもツルアジサイが巻き付いている。右中央はギボウシ(擬宝珠)、下はクルマムグラ。
ヒメフウロ(姫風露)を見つけた。ハクサンフウロやシコクフウロに似ているが、花は一回りも二回りも小さく、花弁が濃いめのピンクで白い筋がある。主に中部地方や伊吹山、剣山などの石灰岩地に分布する。独特のにおいを持つことから「シオヤキソウ」の別名がある。塩を焼いた臭いってどんなの?高ノ瀬峡の石灰岩崩壊地には群落があるという。
ミゾホオズキ(溝酸漿)は山地の湿地や清流沿いに生える。名前の由来は、溝(水辺)に生え、果実がホオズキに似ているため。花が終わると花弁が抜け落ち、袋状になった額の中に果実ができる。
上の2つは弁の切れ込みと萼の長さが微妙に違うが、個体差と思われる。
花期は6月〜8月。
シコクママコナ(四国飯子菜) タマカラマツ(玉唐松)
絶滅危惧1B類(EN)
アキノタムラソウ(秋田村草)
ツルアリドウシ(蔓蟻通し)、コメツツジくらいの大きさの花弁に毛がたくさん生えている。日本中に広く分布する、代表的な林床の花だそうだ。
左のキノコはたぶんナメコかな?味噌汁に入れると美味しそう!多分大丈夫だけどさっぱり分からないのでやめておこう(もったいない?)。
15時21分、別府渓谷の吊り橋を右岸へ渡るとゴール。寄り道しながら写真もたくさん(約400枚)撮ったので、4時間近くかかった。お疲れ〜。
今日もたくさんの花やキノコに出会って気持ちよく帰路につく。
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