奥穂高岳 荒れ狂った10月のブリザードに翻弄される
北アルプス2006年10月6日〜10日4泊5日
    
行  程 ■1日目
1日目 土佐山田〜南国〜岡山〜京都〜沢渡 【土佐山田】08:12(南風6号)→【岡山】10:27/10:42(のぞみ12号)→【名古屋】12:23/13:00(ワイドビューしなの13号)→【松本】14:55/15:30(松本電鉄電車)→【新島々】16:00/16:05(松本電鉄バス)→【上高地】17:10
2日目 沢渡〜上高地〜横尾〜涸沢
出発日前日の10月5日に台風16号が接近した(このため車で向かう予定だったYさんのグループは出発をとりやめた)。我々は公共交通利用なのでキャンセルが面倒ということもあるが「台風一過」を当てにして出発を決行。出発当日、台風が熱帯低気圧になって東へ去ったのでもう大丈夫!のはずだったが・・・。
6日は上高地までなので、南風6号でゆっくりの出発だ。いつものようにビールで喉を潤しながら岡山へ向かう。岡山からは新幹線と中央西線、松本電鉄の電車・バスを乗り継いで上高地へやってきた。今夜お世話になるのは今年2回目となる「西糸屋山荘」さん。
3日目 涸沢〜穂高岳山荘
4日目 穂高岳山荘〜奥穂高岳〜穂高岳山荘〜涸沢〜横尾〜上高地
■2日目
5日目 上高地〜松本〜名古屋〜岡山〜土佐山田 【上高地】07:45→【明神】08:40→【徳沢】09:30/09:50→【横尾】10:50/11:10→【本谷橋】12:30→【涸沢】14:00
コースタイム
1日目
2日目 6時間15分
3日目 時間分
4日目 時間分
5日目
時間分
コース距離
未計算q (上高地〜横尾〜涸沢〜奥穂高岳〜涸沢〜横尾〜上高地)
7時45分、上高地をスタートする。焼岳の後には青空も見えるのだが天候はあまりよくない。
1時間弱で明神へ着いた。夏山シーズンの最後を締めくくるこの週末、日本一の紅葉を目指す登山者で賑わう。ここから右岸へ渡って明神池から上高地へと周回する自然探訪路は、観光客も散策を楽しむことができる遊歩道になっている。
累積標高差
未計算
メンバー
Yさん・Wさん・自分
天気
雨・吹雪・晴れ
梓川に虹がかかった。
上高地から横尾までの約3時間、前穂・明神の鋭峰を左に望みながら、梓川の左岸をひたすら歩く。
このころ、東に去るはずの熱帯低気圧が急速に発達し、本州の太平洋岸をゆっくりと北上、大陸には高気圧が南下し完全な西高東低の冬型の気圧配置となっていた。この影響で中部山岳地帯は大荒れの天候に・・・。
9時30分、徳沢に着いた。昭和初期の徳沢は放牧場で、最盛期には400頭の牛馬がいたそうだ。広々としておりキャンプを楽しむ人も多い。また、槍ヶ岳や穂高岳への中継基地、蝶ヶ岳の長塀尾根ルートの登山口として登山者が集う。徳沢に立つ徳沢園は井上靖の小説「氷壁」で有名。
屏風岩が見えてくると槍ヶ岳との分岐点、横尾も近い。
横尾は、槍ヶ岳と穂高への登山ルートの分岐点。槍沢に架かる橋を渡って左に進めば涸沢を経て穂高へ、橋を渡らずにまっすぐ行けば槍ヶ岳だ。涸沢の雪解け水が涸沢出合で横尾本谷と合流し、横尾谷となって屏風岩の北側を流れ、ここで槍沢と合流して梓川となり、上高地へと流れている。
屏風岩の岩壁、ここを登るクライマーも多い。Y隊長もその一人だが、このときはまだ知り合っていない。
横尾から涸沢へのほぼ中間の本谷橋を渡る頃には雨も本降りになってきたので写真撮影は断念。
近年、涸沢は、紅葉の名所として有名となり、見頃の時期には全国からおびただしい数の登山者が訪れる。旅行業者の企画する関東・京阪神方面からのツアー客も多い。この日、定員200人の涸沢ヒュッテに700人ほどが宿泊していたらしい。ひざを抱えて座るのが精一杯のところだ。我々は片付けの済んだ食堂に移動し、ヒュッテの用意したシュラフ(一応持ってはいたのだが)で横になったが猛烈な風が建物を揺るがし熟睡できなかった。
▲上へ ■3日目
【涸沢ヒュッテ】12:10→【穂高岳山荘】15:10
この日は、北穂から主稜線を涸沢岳経由で奥穂へ行く予定だった。しかしこの吹雪では危険すぎる。かと言って、目的地を目の前にして帰るわけにもいかない(99%の人が帰るか停滞したようだが・・・)。
涸沢から涸沢岳を見上げる。北穂はあきらめて中央左のザイテングラードと呼ばれる支稜を登ることにした。白出のコルへの最短ルートだ。
涸沢ヒュッテから北穂高方面を望む。テントの中も昨夜は眠れなかったにちがいない。涸沢は、標高の高い稜線に遮られているので夏場でも残雪が多く残り、登山シーズンには色とりどりのテントが並ぶ。穂高登山の中心地であり「アルピニストの聖地」などと言われている。
お昼まで様子を見たが、回復しそうにないので12時過ぎにヒュッテを出発した。涸沢小屋を経由し、ザイテングラードに向かう。前穂高岳は2峰あたりから上が吹雪で見えない。ナナカマドの紅葉もピークを迎えているが、葉が飛ばされてしまいそうだ。
ザイテングラードが近づいてきた。上部の岩は獅子岩。この先は、登るのが精一杯で写真どころではなくなりカメラをザックにしまう。
天気が良ければ大勢の登山者に出会うはずだが誰一人として降りてこない。吹き荒れる風に時々立ち止まって耐風姿勢をとらないと飛ばされそうだった。雪が顔に突き刺さり痛い。このころ中部山岳地帯では北アルプスを中心として数件の遭難事故が起こっていた。初めての穂高に大変なときに来てしまった。
15時10分コースタイムを30分ほどオーバーして何とか白出のコルに到着。
「岐阜県警察穂高常駐隊基地」になっている穂高岳山荘に転げ込み一安心。
穂高岳山荘の宿泊者は、ハイシーズンにも関わらず、下山をあきらめ停滞した人(無理に下山しようとすると県警に止められるだろう)と強行突破で登った自分達の10数人しかいなかった。昨夜の涸沢とは雲泥の違いの快適さだ。しかもオーナーのご厚意で、ビール、ワイン、お酒などアルコール飲み放題の大サービス。依存症の自分たちには嬉しい夜だった。
京都の方と話が弾み意気投合。二人の経験談など聞かせていただいた。
ニュースでは、この時点で白馬岳や目と鼻の先のジャンダルム、吊り尾根などでの遭難が報道されている。21時には風が収まってきたので外で写真を撮ってみたが三脚を据えてもまだぶれる。
21時30分頃には空が晴れ渡り、月が輝いていた。一瞬、月がジェットを噴出したような現象が見られた。ムーンピラーというものは聞いたことがあるが、これは横向きだ。これも気象による現象だと思うが、何というものだろう?
▲上へ ■4日目
【穂高岳山荘】09:10→【奥穂高岳】10:00/10:45→【穂高岳山荘】→【涸沢】13:35/14:05→【横尾】15:45/15:55→【徳沢】16:30/16:40→【明神】17:15/17:20→【上高地バスターミナル】17:55→【西糸屋山荘】18:05
午前5時、水平線が赤く輝き始め、空が青みを増してくる。昨日の吹雪が嘘のように静かな朝だ。
前穂高と雲海の彼方に八ヶ岳の稜線が浮かんできた。山荘近くでカメラを構えてひたすら御来光を待つ。雪には三脚が立ちにくく、足がたわんでいる。
5時46分、御来光。
蒲田川をはさんで西にそびえる笠ヶ岳に日が当たり始める。
午前6時、ジャンダルム付近で県警ヘリによる遭難者の救出活動が開始された。西穂から奥穂へ縦走中のパーティが吹雪に巻き込まれ、ロバの耳付近で遭難。1人が亡くなられた。
岐阜県警の「らいちょうU」が、遭難者を高山市へ搬送する。
凍り付いたルートを見て一度は登頂をあきらめたが、颯爽と登る一人の登山者(赤いアウターに赤いスパッツ、赤いザックときまっている)にハシゴを登った上部の雪面をキックステップで登ることなど注意点を教わり、9時に登頂開始。確かにハシゴを登った後のガレ場が滑り落ちそうで怖い。
10時00分、奥穂高岳(3,190m)の山頂に到着。
奥穂高の山頂付近で前穂高をバックに。この時手にしているカメラは5Dのバッテリーパック付き、レンズが28-300IS。
奥穂高岳山頂から上高地を俯瞰する。梓川を挟んで左(東)に霞沢岳、右(西)に焼岳が、また南には雪をいただいた乗鞍岳と御嶽山が望まれる。
乗鞍岳(3,026m)と御嶽山(3,067m)を300mmでズームアップ。どちらも成層火山だ。いつかは登らなければならない。
乗鞍岳は山頂部の畳平(標高2,700m)までバスで行ける。御嶽山もスキー場のロープウェイで2,150mまで行けるが、約1,000mは登る必要がある。
北を見れば、主稜線の向こうに北アルプスのランドマーク、槍ヶ岳が聳える。4人が亡くなった白馬岳周辺に雪が多いのが分かる。
西穂から奥穂へ縦走中に遭難したパーティーは、ジャンダルム付近で行動不能となり、一人が滑落したらしい。あの吹雪の中でこの岩稜を歩くことは不可能だ。奥穂までにはロバの耳や馬ノ背などの難所が控えている。生還した人も凍傷を負っていたようだ。
この時の同時遭難で北アルプスを中心に10人の登山者が亡くなった。
目の前には前穂高岳の山頂と明神岳、遠く富士山と南アルプスが青い稜線が浮かんでいた。10時45分山頂を後にする。
山荘に戻り、ザイテングラードを下る。
ナナカマドの紅葉が青空に映える。
紅葉の赤、雪の白、そして空の青、三段紅葉のトリコロールが美しい。
堪えきれずに涸沢ヒュッテの展望テラスで生ビールをいただく。
北穂高をバックにした涸沢のテント場、そして南には前穂高北尾根と屏風岩の錦繍のパノラマ。
紅葉を楽しみながら、横尾へと降る。
横尾へ着いたのは日も傾き始めた15時47分、ここから上高地まで約10q歩かなければならない。16時31分、徳沢通過、17時16分、明神5峰を右に見ながら急ぐ。
バスターミナルで翌朝のバスを予約し、西糸屋山荘へ帰りついたら18時を回ってしまった。
▲上へ ■5日目
【上高地】08:00(松本電鉄バス)→【新島々】09:05/09:22(松本電鉄電車)→【松本】09:51/10:42(ワイドビューしなの8号)〜【名古屋】12:47/12:57(のぞみ23号)→【岡山】14:37/14:52(南風15号)→【土佐山田】17:13
うっすらと雪をまとった穂高連峰(7時42分、河童橋より)が美しい上高地の朝。昨日は中央左の奥穂高岳の山頂にいた。今日はひたすら高知に向かって帰るのみ。
▲上へ ■HOME■  ■山行記録(日程順)■  ■山行記録(山域別)■